21世紀のエウロパ・シリーズこと、TSWW(The Second World War)シリーズの新作「 Balkan Fury (Revised Edition)」が到着。昨年の夏に発売されるかと思って振込も済ませていたのに、そのことをすっかり忘れていたのが恐ろしい。そもそもシリーズ第2弾として2011年に「Balkan Fury」が発売され、自分も5年前にジップロック版を入手していたが(その時点でボックス版が売り切れていた)、本作は14年ぶりの改訂&拡張版になっている。もちろんタイトル通り、舞台はバルカン半島である。
旧版は、1940年~1941年のバルカン半島、つまり枢軸軍によるアルバニア、ギリシャ侵攻を扱っていたが、今回のRevised Editionでは1943年6月まで拡張され、枢軸軍占領後のユーゴスラヴィア国内でのパルチザン戦争まで含まれるようになった。
TSWWの中の人、2ヶ月ぶりにFacebookを更新して、何があったかと思ったら、なんと不法に銀行口座からお金が引き出され、事業や生活資金が無くなるという事態になっていたらしい。とりあえず新作の出荷は始まったようなのでひと安心(日本にも、と言及してあった)。https://t.co/SBZlaz00bM
— wargaming-esoterica (@WEsoterica) 2024年11月30日
ちなみに本当は、紙製のルールブックやチャートを省いてCD-ROMデータにしたLieutenant Edition(低額)を注文したのに、なぜか紙製ルールが入っていたうえ、新しいカバーアートを用いた限定版ボックス(高額)で届いてしまっている。今さら返品するのも妙なので、CR-ROMだけ後から送ってくれるよう連絡中。なにしろゲーム発売直前に、メーカーの中の人が、不正に銀行口座からお金を盗まれるという事態が発生したので、あちらもいろいろ混乱しているのだろう。ちなみに一緒に注文したはずの「Madagascar」「Hakkaa Paalle Revised Edition」も、まだ届いていない……(それも連絡中)
地図盤は、旧版と同じく2枚のみ。旧版とは色調が若干違い、細かい地形や地名なども修正されているかもしれない。
旧版との最大の違いはカウンターの数。右が旧版でカウンターシートは4枚、カウンター総数1120個だったのが、新版ではカウンターシート11枚、カウンター総数3080個にまで増えている。バルカン半島だけなのに、いったい何がそんなに増えたのか……
まず右側、青灰色のユニット=ギリシャ軍は、旧版と比べて倍増している。何が増えているかと言えば、もしギリシャ軍が1941年以降も枢軸軍に占領されなかった場合の増援・改良ユニット(機甲師団とかもある)や、第一次大戦前にオスマン帝国を警戒して発注された戦艦サラミスなどが入っている。たぶん、ほとんど使わないだろうけど。
一方、左側のカーキ色ユニット=ユーゴ軍は3倍増になっていて、こちらも将来的な発展ユニット等が含まれている。そしてパルチザンユニットはまた別と……
こちらイタリア軍ユニットも、旧版のほぼ3倍に増加している。これだけあるんだから大戦期のイタリア軍部隊や艦船は網羅しているんじゃないかと思ったりする。
こちらはお馴染みドイツ軍、そしてブルガリア軍、ハンガリー軍。
そして枢軸軍に限らず、各国とも、よーく見ると微妙に旧版から数値が変更されていたりして、やっぱりこのRivised Editionを買わなくちゃいかんのかと。
そして最も目を惹く新規ユニットが、こちらのパルチザン部隊。しかもご丁寧に、ボスニア、コソヴォ、セルビア、モンテネグロ、マケドニアといった地域別パルチザンや、ムスリム、ユーゴ王国軍/セルビア民族主義派のチェトニク、ナチスドイツと結びついたウスタシェ等、さすが「モザイク国家」と呼ばれるだけあって、さまざまな派閥が収録されている。
また、後に大統領となるチトーも指揮官ユニット化されていて、成功ダイス修正+2、ユニットの戦闘力+20%と、「Hakkaa Paalle」に含まれているフィンランド軍の英雄シーラスヴォ将軍(スオムッサルミでソ連軍を殲滅)と同等の能力を有している。さらにチトーの場合、移動力+2、攻撃ダイス+1修正もあり、なかなか優秀だなと。
しかもこのパルチザン各派がどう関係しているのか、どの時期にどれだけ募兵できるのかというチャートもあり、政治的に非常にややこしそうなシナリオになりそうだ。
基本シリーズルールがまた明確化されたり、パルチザン系のルールが増えているとは思うが、翻訳作業はCD-ROMが到着してからにしよう。なにしろボリュームが多いので、焦ってやることもないだろうと。
とりあえずルールCD-ROMが届く前に、岩波新書「ユーゴスラヴィア現代史」を買ったので、当時のパルチザン関連の情報を仕入れることにした。なにしろナチスドイツ占領以降のパルチザン戦争に関しては、まとまった資料本が手元に無く、通史的な読み物にしても、リデルハートの「第二次世界大戦」やウィルモットの「大いなる聖戦」ではほぼ無視され、チャーチル「第二次世界大戦」やビーヴァー「第二次世界大戦」で多少触れられている程度なので、そのあたりから、このややこしいバルカン半島戦線やパルチザン戦争を理解していきたいと思う。