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【The Second World War】TSWW1.6 2020年9月FAQとシナリオ日本語訳 無料公開

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21世紀版エウロパ・シリーズこと、WWII戦役級シリーズTSWW(The Second World War)の公式フォーラムにて、TSWW1.6の2020年9月FAQと、入門者向けシナリオ6本の日本語訳ファイルが公開されました。ダウンロードするには無料アカウント登録が必要となります。

今回公開したシナリオは、以下の6本です。本当はシナリオブックを全訳してアップしたいのですが、分量が多すぎてなかなか完訳できないので、遊びやすいシナリオだけ切り取ってアップしました。

 ・「TSWW : Hakkaa Päälle」1940年:冬戦争・ティモシェンコ攻勢シナリオ

 ・「TSWW:Day of Infamy」1941年:真珠湾奇襲シナリオ

 ・「TSWW:Day of Infamy」1942年:ドゥーリトル東京空襲シナリオ

 ・「TSWW:Singapore !」1941年:マレー半島侵攻シナリオ

 ・「TSWW:Singapore !」1944年:インパール作戦シナリオ

 ・「TSWW:Barbarossa」1941年:カリーニン戦シナリオ

シャングリラ作戦(ドゥーリトル東京空襲)シナリオのファイルが2つありますが、何かの間違いです。あと、本当は「TSWW:Day of Infamy」の仮想ウェーク島救出作戦シナリオの和訳ファイルも送ったんですけど、なぜかアップされてないですね。まあ、また別のシナリオを送る時にでも再送します。

この中でも、一番ハードルが高いのがマレー半島侵攻シナリオです。これ陸海空、全部乗せのシナリオとなると、上陸作戦やらその補給やら、面倒なルールを読まなきゃなりません。僕もまだプレイしてないです。その前に、真珠湾シナリオで航空攻撃・対艦攻撃を学んだり、ティモシェンコ攻勢かカリーニン戦シナリオで陸戦を学びましょう。カリーニン戦シナリオも、まだプレイしてませんが、規模的には手頃なはず。インパール作戦シナリオは、規模は大きいですが海戦は無いので、マレー半島戦よりちょっとハードルが下がるはずです。プレイ済みのシナリオに関しては、下記Blog記事を参考にしてみてください。また、TSWWのシナリオは結構おおざっぱな部分もあるので、よく分からないところはすっ飛ばしたり、自分で考えましょう。そういうキットです。あしからず。


【参考文献】Jack Radey & Charles Sharp「The Defense of Moscow 1941 : The Northern Flank」

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「TSWW:Barbarossa」には、1941年10月~12月のカリーニン周辺での戦闘を扱うシナリオがあり、それは先日、日本語訳ファイルとしても公開されたのだけれど、その元ネタとなった「The Defense of moscow 1941」もすでに購入済みである。いつものようにKindle版ではなくハードカバー版で入手。TSWW制作チームは、本書にインスパイアされて、カリーニン戦シナリオを作ったそうで、そのためゲームクレジットにも「Barbarossa」から、本書の著者であり、ウォーゲーム・デザイナーでもある、Jack Radey氏の名前が載っている。

シナリオの前説にも書いてあるが、たしかにこの戦闘、(自分が読んだ範囲でしかないが)ドイツ側からの戦史にはまず出てこない。コロミーエツの「モスクワ攻防戦」には、ソ連側の反撃の様子が載っているし、昔懐かしいソ連版の「第二次世界大戦史」第3巻でもちょろっと触れられているが、ドイツ側の作戦意図までは詳しく書かれていない。まさに、忘れられた戦い、という感じだ。 

1941年10月、ドイツ第3装甲軍集団はカリーニンを奪い、そこから東のモスクワに向かって進撃し、クリンを占領した後、モスクワに近接する運河に橋頭堡を築き……という展開は、ドイツ側の戦史にも載っている。しかし本書によると、ドイツ軍はカリーニンを奪った後、すぐには東に向かわず、むしろ逆方向の北西に向かっていたと。その行動の裏には、北方軍集団からも部隊を南下させて、ヴァルダイ高地の東側で手をつなぎ、そこに陣取るソ連軍を包囲しようという狙いがあったと。しかしソ連軍の果敢な反撃によって、その意図は挫かれ、仕方なくドイツ軍は包囲を諦め、モスクワへ向かった……ということらしい。

後世の人間からすると『いや、そんな包囲なんかせずとも、すぐに直接モスクワを狙えば良かったのに』と言いたくなるが、Jack Radeyによれば、それは後知恵だと。当時のドイツ軍は、あわてなくても、いずれモスクワは陥落するだろうから、それよりヴィヤズマ包囲戦のように、先にソ連軍をまた一網打尽にしようと思っていたらしい。まあ、そういった楽観的なモノの見方をしていても、おかしくはない。

「TSWW:Barbarossa」ではこの戦闘を、史実通りのシナリオAと、北方軍集団も参加する仮想シナリオBとして紹介している。規模的にも手頃なので「TSWW:Barbarossa」で最初にプレイするシナリオとしては良いかなと思い、自分も現在、シナリオAのソロプレイの準備中である。

もしこのカリーニン戦にご興味があれば「OCS:Guderian's Blitzkrieg II」の地図盤A+Dだけでも、プレイ可能かもしれない。あいにくシナリオとしては、中央からモスクワを攻める地図盤B+Eシナリオ(The Northern Pincers)、南から攻める地図盤C+Fシナリオ(Guderian's Blitzkrieg)しかなく、こちらでもカリーニン戦は無視されている。さらにOCSでは、レニングラード方面の地図盤や部隊カウンターが無いため、ヴァルダイ高地を包囲するところまでは、今のところ表現できない。となると、やはりTSWWの出番ということで、近いうちに触れてみようと思う。 

【参考文献】Richard Overy「Russia's War:A History of the Soviet Effort:1941-1945」

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イギリスの歴史家Richard Overyの「Russia's War:A History of the Soviet Effort:1941-1945」を購入した。Amazonで、独ソ戦関係の洋書を眺めていたら、評価数180、そのうち7割が★★★★★だったので、割とポピュラーに読まれている本なのかと思って取り寄せてみた。どうやら同タイトルの映像ドキュメンタリーが作られていたらしく、その書籍版という形なのだろうか。


Russia's War - Vol1 Full - The Darkness Descends / The Hour Before Midnight

一応、1990年代に入って開示された情報を基に、ソ連側の視点に立って、第二次大戦時の戦争努力を紐解くという内容らしい。しかしドイツ側を研究しているDavid Stahelに言わせれば(Operation Barbarossa and Germany's Defeat in the eastの序文で引き合いに出されている)、昔ながらの「ドイツ軍は開戦時からソ連軍を薙ぎ倒し……」的な解釈に留まっているそうで、もっとドイツ軍の戦略的稚拙さを書けよということなのだろう。まあ、本書が出版されたのは1997年なので、当時の新公開情報を含んでいるとは言え、もはやさほど新しくもないのだろう。たぶん部数的にはよく売れていて、読まれているからこそ評価数も多いのだろうが、ある意味、一般読者向けの内容で、さらにコアなものを求める向きにはモノ足りないのかもしれない。やはり洋書は、もう少し内容を絞って買った方がいいなあ。

【The Second Word War】「Barbarossa」Barbarossa Kalinin Solo-Play AAR

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「TSWW:Barbarossa」の練習用ミニシナリオ「Kalinin:The Northern Gateway to Moscow」をソロプレイしてみた。今回は、史実通りのAシナリオ(Bシナリオは北から北方軍集団の部隊も出てくる)。1941年10月前半ターン、ヴィヤジマでソ連軍の大部隊を一網打尽にしたドイツ軍は、いよいよソ連の首都モスクワへ迫ったものの、すぐには向かわず、カリーニンから北西へ向かい、ヴァルダイ高地のソ連軍部隊も包囲しようとしたが、果敢な反撃に遭って包囲作戦は頓挫。モスクワ攻略も遅れた……という、Jack Radeyの著書「The Defense of Moscow 1941」にインスパイアされて生まれたシナリオである。

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カリーニンへ向かうドイツ軍部隊は、第41(XXXXI)軍団麾下の、第1装甲師団(15-20)、第900教導連隊(3-4-18)、第36自動車化師団(10-20)といった面々。対するソ連軍は、10月後半ターンに、ヴァトゥーティン少将指揮の第31軍、第183ラトビア歩兵師団、第8戦車旅団が増援に駆けつける予定。この時期のソ連軍の戦闘効率補正(CEV)は✕0.75のため、ユニット戦力は額面✕0.75となるが、第31軍に関しては✕1.0、額面そのままという選択ルールを採用する(実際、第31軍が反撃に成功しているため)。しかし対するドイツ軍の戦闘効率補正は✕1.5なので、それでもかなりの差が……

ちなみにドイツ第900教導連隊とは、Radey氏の著書によると、ハーフトラック装備の装甲擲弾兵、トラック装備の自動車化歩兵、対戦車、砲兵、信号各1個大隊から成る、独立部隊とのこと。このカリーニン戦の後、消耗した第1装甲師団を補充するために、解隊されて、第1装甲師団に吸収されたそうな。末期戦では、こういう部隊をよく見かけるけど、この時期もいろいろあるのね。 

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さて第1(1941年10月前半)ターン。先手ドイツ軍。まず第36自動車化師団+第900教導連隊が、進路を邪魔するソ連第161歩兵師団(減少状態・3-4-6)をオーバーラン。ドイツ軍スタックの額面攻撃力18✕1.5=27。ソ連軍は防御力4✕0.75=3と、余裕の戦闘比9:1で、無傷でソ連軍師団を除去して前進。第1装甲師団他の支援部隊もそれに続いてカリーニン攻撃準備に入った。

カリーニンに対しては、大河川越しの攻撃となるため、ドイツ軍の戦力は✕0.5となる。一応、天候は「凍結」だが、「凍結」が3ターン続かないと大河川は凍らないため、ペナルティはそのまま。ただし砲兵ユニットは、河川越しでもペナルティは無いし、重砲兵ユニットは都市に対して3倍の戦力とみなす。そのためドイツ軍は、砲兵以外の戦力が29✕1.5(CEV)✕0.5(大河川)=21.75。さらにロケット砲兵が攻撃力8✕1.5=12。重砲兵4✕3✕1.5=18戦力となり、合計51.75となる。

対するソ連軍は、NKVD連隊と歩兵師団で防御力6✕0.75=4.5。戦闘比振りきりの9:1となった。攻撃ダイス修整は、大河川越し-2、大都市-2。しかしドイツ軍側には、第101火炎放射戦車大隊が参加している。火炎放射戦車大隊(スタックポイント0.5)は、都市攻撃の際、スタックポイント4倍=2ポイント(旅団相当)の戦闘工兵部隊とみなす。都市攻撃に2スタックポイントの戦闘工兵が参加している場合、ダイス修整+2となるため、合計-2。結果、防御側除去(DE)となり、カリーニンはドイツ軍の手に落ちた。ちなみに大都市に対しては戦車ショック効果(ASE)が使えないため、その手の計算は省かれている。 

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これに対してソ連軍は反応フェイズで、ヴァルダイ高地東側ルートを守るべく、Thorzok前面の山岳森林ヘクスに部隊を配置。山岳森林ヘクスは、攻撃側の戦力を(天候が晴天でも)35%に落とすという、かなり守れる地形である。ちなみにソ連軍には、スターリンの許可無く後退してはならないルールもあるが、それは枢軸軍がスターリングラードに迫った時からなので、この時点ではまだ自由に後退もできる。 

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第2(1941年10月後半)ターン。ドイツ軍は、その山岳森林ヘクスに攻撃開始。戦力は、先ほどのカリーニン攻略部隊とほぼ一緒。しかし今回は、41戦力✕1.5(CEV)✕0.35(山岳森林)=21.525戦力とやや頼りない。一応、近接航空支援として、Ju87B2、Me110E1各1ユニットを送り込んだが、合計作戦爆撃力13=地上戦力3.25なので、それを足しても戦力25。対するソ連軍スタックは、減少状態の第252歩兵師団と砲兵2個連隊で、防御力12✕0.75=9。戦闘比2.77:1で、端数ダイスの結果、戦闘比2:1に。さらに山岳森林ヘクスへの攻撃ダイス修整は-2。結果、防御側4スタックポイントの半分を攻撃側が失うだけとなり、第36自動車化師団が減少面となった(師団は4スタックポイント。減少面に裏返すことで2スタックポイント損害を引き受けられる)。

第2ターン裏、ソ連軍には待望の第31軍が到着し、早速Thorzok前面へ。しかし2スタックがかりでも戦力45にしかならず、ドイツ軍スタック51戦力を攻めるのは無謀だったので、守りに徹するしか…… 

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第3(1941年11月前半)ターン。ドイツ軍は、後方からさらに1個歩兵師団を呼び寄せ、再びThorzok前面を攻撃。しかしソ連軍も第31軍の増援を得たため、戦闘比は前ターンよりも悪い1:1。それでも防御側後退(DR)が出たので、ソ連軍スタックはThorzokへ後退したが、戦力的には無傷。でまあ、11月に入っても、こんな所でこんなことをしていて良いのか?モスクワを攻めた方が良いんじゃないのか?という声が聞こえてきたので、今回のソロプレイはここまで。

結局、シナリオと言いつつ、ドイツ軍1スタックがどこまで攻められるかだけに焦点を当ててみたが、やはり大規模シナリオに行く前に、こういった局面だけを動かしてみて、戦闘計算などに慣れるのは必要かと。ただし今回も、火炎放射戦車の出番はあったものの、(大都市と山岳森林だったため)戦車ショック効果や、対戦車効果を計算するような戦闘は無かったので、それにも慣れておかないと。

やはりTSWWも、こういった局地的シナリオより、戦役級シナリオをプレイした方が楽しそうだし、次は戦車効果を使用する、平地での大規模シナリオが良いかなと。となると、いきなり青作戦シナリオ? それは時間がかかりそうだな……

【参考文献】「地政学原論」

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地政学原論 (日本経済新聞出版)

地政学原論 (日本経済新聞出版)

  • 発売日: 2020/07/16
  • メディア:Kindle
 

7月の新刊「地政学原論」を購入。最近、地政学とタイトルの付いた本もかなり増えてきたが、中には妙に扇情的な内容もあるので、一応気をつけて買うようにはしている。それも本書で語られているが、地政学を意図的に政治化している本もあるので、なるべく真摯な学究肌の本に触れたいし、日経の原論シリーズなら「戦略原論」「空と宇宙の戦略原論」も参考になったので良いかなと。

本書では、地政学そのものの歴史を、マッキンダー、スパイクマン等の思想家たちを通じて紐解き、それが大戦前後で政治的に利用され、戦後はタブー視されてきたという経緯にも触れている。そういった差別的な目で視られるという意味では、戦略研究や軍事学もそうだし、戦争に関わるという点ではウォーゲームもそうだよなと。まあ、ホビー・ウォーゲームとなると、軍事研究の大衆化なのだろうけど。

また本書では、地政学的に現在の世界情勢……インド太平洋地域での米中を中心とした対立構造も概説している。このあたりは、21世紀の戦争を扱ったウォーゲームの背景を知るにも役立つと思う。 

実は先日、アメリカの戦略シンクタンクであるランド研究所が、一般向けに初めて「Hedgemony」なるウォーゲームを発売した。アメリカ、EU/NATO、ロシア、中国、北朝鮮、イランプレイヤーの他に、記録係、進行係を含めた、21世紀のマルチ政戦略ゲームという感じだが、これをついつい注文してしまったのだ。これ、まさに地政学的なゲームだと思うが、おかげで自分の中で、21世紀の戦争に対する興味も復活してしまった。せっかくウォーゲーム・コレクションを断捨離して、接するジャンルを絞ったのになあ。まあ、たしかに以前からハイブリッド戦争とか、マルチドメイン戦とか気になっていたので、ここはもう自分の物欲・知識欲に降参して、現代の紛争や地政学的な本も読んでいこうと思う。やれやれ。 

【参考文献】「最新世界紛争地図」「地政学世界地図」

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あらためて21世紀の戦争を学び直そうということで、「最新世界紛争地図」を購入。この手の本は、なるべく新しいモノが良さげだが、原書は第四版が2019年発売ということで、まあ宜しかろうと。各地の紛争地域の地図を基に、その背景が簡単にまとめられていて、現在の世界情勢をおおまかに俯瞰するには良さそうだ。最近、武力衝突が始まったアルメニアアゼルバイジャンの地図もあるが、モザイクのように入り組んだ人種構成を見ると目眩がする。まあ、どこの紛争地域も人種や勢力が入り乱れていて、旧ユーゴ地域にしろ、イスラエルパレスチナにしろ、シリア、レバノン、マリ、ナイジェリア、コンゴ南スーダンミャンマーアフガニスタン、印パ国境……どこもかしこも『これどうすりゃいいんだ』という複雑な状況に陥っている。複雑なだけに、膠着したまま(ルトワック的に言うなら凍結状態のまま)で、永続的に対立・緊張状態が続くというのも困ったものだが、21世紀の戦争を扱ったウォーゲームに触れるなら、そういった背景も知っておかなければ。 

また、こちらも原書は2019年の「地政学世界地図」も購入。こちらはもう少し文章量が多いが、紛争地域だけでなく、経済や環境問題を抱えた地域も紹介している。著者は、フランスの歴史と地政学の先生でYouTuberというあたり、内容的に大丈夫か?と思ったが、とりあえず各地の問題が平易にまとめられている。ただ、一応注釈があちこちに付いているが、すでに原書発売時点から状況が変わった事項も多々あり、近年の国際情勢の動きの速さも感じてしまう。まあ、まずはこういった書籍で、おおざっぱに理解しつつ、それ以上詳しい知識が欲しければ、地域や問題毎の文献に進むのが自分流なので。

しかしこういった本を読んでいると、学生時代を思い出すなあ。大学受験は地理選択だったし、入ったのも国際関係学部だったので、そのままこの手の問題を研究するような職業に進んでもおかしくなかったのだけれど、あの当時は、研究職でやっていこうなんて考えは微塵も無かった。当時、湾岸戦争の戦況をニュースで眺めつつ、GDW「Persian Gulf」で事前に戦争展開をシミュレーションしていた頃が懐かしい。そしてその30年後、また同じようなことをしようとしている自分がいる。やれやれ。

【参考文献】「近未来戦を決するマルチドメイン作戦」

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今年7月に発売された「近未来戦を決するマルチドメイン作戦」を購入。21世紀の戦争では、今までの陸・海・空に加えて、宇宙・サイバー・電磁波領域も戦場となるが、その複合型の軍事領域を「マルチドメイン(多領域)作戦」「クロスドメイン(領域横断)作戦」と呼んでいる。これがロシアでは(ロシア軍は否定しているそうだが)「ハイブリッド戦」と呼ばれ、中国では「超限戦」「情報化戦争」などと呼ばれているが、本書では、そういった各国の新しい複合領域戦争を簡単に解説した一冊になっている。

また複合領域戦争の実戦例として、ロシアの軍事行動を挙げ、エストニアへのサイバー攻撃や、ウクライナ戦争、シリア内戦での電子戦、宇宙戦も取り上げている。またウクライナ戦争で見られるような、民間武装集団に偽装した特殊部隊を送り込んだり、国家による攻撃とはすぐ分からないサイバー攻撃を活用するなどの欺瞞工作=21世紀の戦場の霧も紹介されていて興味深い。

やはり21世紀の戦争を扱うウォーゲームなら、こういった宇宙、サイバー、電磁波、情報戦という要素も取り入れてほしいと思う。ただ単に、軍艦や軍用機といった武器データだけをアップデートすれば最新の現代戦ウォーゲームになるわけではなく、もうすでに実装されつつある、こういった新手の戦争手法もゲームとして見てみたい。一応、欺瞞やらサイバー戦と同時に、既存の正規軍同士の武力衝突も想定されているわけだし、そこは今までのウォーゲーム・システムで良いとして、そこに新要素を上乗せするか、それとも新要素を加えてアレンジするか、いろいろ見せ方はあると思うのだが……

【参考文献】「シャドウ・ウォー 中国・ロシアのハイブリッド戦争最前線」

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今年3月の新刊「シャドウ・ウォー 中国・ロシアのハイブリッド戦争最前線」(原書は2019年刊)を購入。著者はCNNのジャーナリスト。本書では、中国やロシアが、アメリカとの武力衝突に至らないよう、そのぎりぎり手前で、暗殺、サイバー戦、宇宙戦、アメリカ大統領選への介入等によって、アメリカ側の力を削ぎ、自国の利益を確保しようとする手段を紹介している。本書では、武力衝突の前段階(グレーゾーンでの戦い)を紹介しているが、実際に武力衝突が起こった場合(レッドゾーンでの戦い)でも、引き続きサイバー戦や宇宙戦が行われ、そちらもハイブリッド戦と呼ばれるのだと思う。

もしこれをウォーゲームで表すなら、①グレーゾーン段階で終わるゲームと、②レッドゾーン段階だけのゲームと、③その双方を継続的にプレイするゲームが考えられる。①は、冷戦時代を扱ったVG「Cold War」のように、武力衝突に至ったらゲーム終了として、その手前で機密作戦やら低強度紛争でポイントを稼ぐようなゲームだろうか。②は、すでに事前段階の機密作戦が終わり、武力衝突をメインに扱う。GMTの「Next War」シリーズがこれに近いし、多くの近未来戦ウォーゲームがこの範疇に入るかと思う。③はその2つをつなぐもので、サイバー戦やプロパガンダ戦を駆使して自軍に有利な状況を生み出し、任意のタイミングで武力衝突にエスカレートさせ、勝敗を決するという流れ。そんなゲームが実在するのか知らないが、これから先、登場してもおかしくない。 

しかし本書を読むと、暗殺なり、プロパガンダ戦なり、敵国民への浸透にしても、それって特に新しい要素ではなく、昔からあっただろうという疑問も湧く。サイバー戦や宇宙戦にしても、要するに敵側の通信手段を阻害するものだから、敵国の電話線を直接切るか、DDoS攻撃を仕掛けるかの違いなんじゃないの、という気もする。通常作戦と特殊作戦のミックスという意味でも、いや真珠湾奇襲の時も特殊潜航艇がいたし、ノルマンディ上陸作戦時の欺瞞作戦とか、バルジ戦の時のスコルツェニーの米軍偽装部隊とかいただろうと。それと何が違うんだ?という論争もあるようだ。

そのあたり、エリノア・スローンの「現代の軍事戦略入門」に上手くまとめられているが、ハイブリッド戦という言葉を広めたフランク・ホフマン(元米海兵隊)によれば、これまでの戦争では、通常作戦と特殊作戦が個別に行われていたが、ハイブリッド戦ではその部隊が同一の戦場で連携し、作戦区分が曖昧だと言う。そういう意味で言うと「ブラックホークダウン」で知られるモガディッシュの戦いのように、特殊部隊デルタフォースとレンジャー部隊とそれを回収する車輌部隊による連携作戦も、ある意味、ハイブリッド的だったことになる。

ただし今現在では、ハイブリッド戦という言葉は、ホフマンが示したような戦争形態というよりも、中国・ロシアの今現在の戦争形態を指すことが多いようだ。このあたり、まだ言葉の意味や用法が少しずつ変化しているし、『それは本当に新しい戦争形態なのか?』という議論もあるので、その意味をあまりガチガチに捉えず、最新知識にアップデートしていきたいと思う。最新の軍事動向についても、日本語で読めるサイトもあるのでチェックしておきたい。


Modern War #22 「New World Order Battles : Hyperwar in the 21th Century」

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f:id:crystal0207:20201012175231j:imageさて、21世紀の戦争を扱ったウォーゲームにも触れようということで、いろいろ探してみた中、一番それっぽい内容のModern War誌22号「New World Order Battles : Hyperwar in the 21th Century (新秩序下の戦闘:21世紀のハイパーウォー)」を購入。2016年発売の号だが、幸い「小さなウォーゲーム屋さん」にまだ翻訳ルール付きの在庫があったので、取り寄せてみた。デザイナーは、この手の近未来戦ゲームも多々発表しているJoseph Miranda。自分にとっては、初MW誌、初小さなウォーゲーム屋さん、初Mirandaと初物づくしとなった。

本誌掲載のMiranda氏の記事を読むと、いわゆるRMA(軍事革命)の第5世代戦争……第1世代のナポレオン戦争、第2世代の第一次大戦、第3世代の第二次大戦、第4世代のテロとゲリラ戦争に続く、新たな世代戦争として、湾岸戦争以降の、コンピュータ・ネットワークと精密誘導兵器、航法機器等を駆使した戦いをゲーム化したとのこと。この号に含まれている2タイトルと、2017年に発売された同じシステムの、Modern War誌27号「Crisis in the East」の2タイトルを合わせると、21世紀版「Modern Battles」クワドリになると。 

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こちらの2タイトルはいずれも仮想戦。まず「Kiev」は、ウクライナで内戦が発生したと仮定し、その首都キエフを奪い合う形で、ロシア軍とNATO軍が衝突する。1ヘクスは3Km。 

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もう1つは「Ulan Bator」。こちらはモンゴルで暴動が発生し、政情不安定になった首都ウランバートルを巡って、ロシアと中国が衝突する。1ヘクス=12km。そう、ヘクススケールは違うが、1ターンはどちらも12時間~3日間を表している。ずいぶん、おおまかだなあ。 

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青色ユニットがロシア軍。1ユニットは大隊規模で、能力値はオーソドックスに「攻撃力-防御力-移動力」。ただし「攻撃力防御力-移動力」となっているユニットは、ハイパーウォー能力……コンピュータ・リンクに優れているとか、夜戦暗視能力があるとか、そういう今時の能力がある。ハイパーウォー能力ユニットは、敵ZOC離脱可、ハイパーウォー戦闘結果表を選択可、反復攻撃と呼ばれる二次攻撃可となっている。そう、この能力が無いユニットは、ZOCから離脱できず、従来型戦闘結果表しか使えず、自軍ターンに単純に1回のみしか攻撃できない。ただしネットウォー・マーカーという便利マーカーを消費すると、一時的に、その能力を持たないユニットもハイパーウォー攻撃が可能となる。まあ、第二次大戦型のウォーゲームで言うなら、ハイパーウォー部隊は機械化部隊や戦車部隊みたいな扱いか。ちなみにロシア軍では、作戦コマンド部隊(OC)だけがハイパーウォー能力を有しており、全軍にその能力が行き渡っているわけでもない。さらに各ユニットの裏面は、昔なつかしい「Panzer Gruppe Guderian」のように戦力未確認状態「?」となっており、両軍とも戦闘を行うか、目標となるまで実際の戦闘力は分からない。ああ、なんか、表現されているものは21世紀なんだけど、やらされることは1970年代のSPI的だなあ…… 

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赤いユニットは、中国軍。こちらは1ユニット連隊規模。第38軍という、軽戦闘車両とコマンドの複合部隊のみがハイパーウォー能力を有している。 

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濃い黄色はウクライナ軍。薄い黄色はNATO軍。アメリカ第2ストライカー連隊(2S)と、同じくアメリカ統合特殊作戦コマンド(JSOC)のみがハイパーウォー対応になっている。

ゲーム手順は、増援・移動・戦闘・回復フェイズをくり返す、これまたオーソドックスな流れ。しかし戦闘フェイズは、①防御側射撃②攻撃側砲爆撃③攻撃側一次攻撃④攻撃側二次攻撃(ハイパーウォー部隊による反復攻撃)と分かれ、やや戦術級寄り。航空攻撃に対しては、防空能力による妨害もあり。空挺降下、ヘリによる空中機動あり、と今時の要素も採り入れてはいるが、おおむね既存の、第二次大戦型のウォーゲーム・システムに収まっている。

まあ、第二次大戦型のウォーゲーム・システムに収まっているうちは、新世代の戦争とは言えないのかもしれない。結局、第二次大戦の戦車ユニットの代わりに、ハイパーウォー部隊が機動的にも攻撃的にも有利なだけで、実際プレイしてみると、それこそ「PGG」とあまり変わりないかも。あくまでSPIクワドリの流れを汲んで、とりあえず今時の戦争を「撮って出し」のように切り取ったモノかなと。なにしろ今現在の戦争は、状況的な変化もあるし、技術的な革新もあるし、あまり細かく作っても、数年で古びてしまう可能性もあり、だったら実験作として、一度おおざっぱに作ってしまえというのも、正解なような気もする。でなければ、その都度アップデートをかまして更新していく方法もあるけれど、それはそれで追いかけるのが大変だし。とりあえず、21世紀の「Modern Battles」クワドリとしては面白そうだ。

Modern War #27 「Modern Battles : Kaliningrad & Mosul」

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Modern War誌22号「New World Order Battles」を買ったので、同じシステムのゲームが付録に付いている27号(2017年発売)も購入してみた。まだ秋葉原イエサブに店頭在庫も残っていたし。表紙には「Crisis in the Mid-East(中東の危機)」とあり、Josepf Mirandaによる、シリア内戦と、2014年のイラクのモスル奪還作戦等を伝える記事が載っている。また、この号に付いている2in1の片割れゲームも、モスル奪回作戦を扱ったゲームなのだが、そのタイトル「Modern Battles : Kaliningrad & Mosul」は表紙には載っていない。もっと言ってしまうと、これ22号の2in1ゲームと合わせて同一システムのクワドリ(4部作)になっているのだから「New World Order Battles II」というタイトルの方が良かったんじゃない? なんでこんな仕様になったのか、謎である……

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とにかく本号にも、MW22号と同一システムで21世紀の戦争を模したハーフサイズのゲームが2つ収録されている。そのうち1つは、先にも述べた「Mosul」。2014年6月に、過激派組織イスラム国(ISIS/ISIL)によって支配されたイラクの都市モスルに対して、アメリカ軍やイラク政府軍等が行った奪還作戦。1ヘクス=1.75km。攻める多国籍軍の中では、アメリカ軍はハイパーウォー能力を有するが、それ以外の部隊には、その能力はあまり見られない。ハイパーウォー戦闘結果表の中には、そういった能力差を持つ部隊の連携のまずさを表す結果(非ハイパーウォー部隊だけが退却する)もある。対するジハディスト側にも、ハイパーウォー能力を有しているユニットがあり。また22号のゲーム2作には無かった要素として「インストレーション(軍事施設)」という、裏向きにして配置される、武器庫、陣地、訓練キャンプ等が登場し、同じヘクスにいる友軍ユニットを支援してくれる。 

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2in1のもうひとつは、仮想戦「Kaliningrad」。ロシアの飛び地であるカリーニングラード(旧ケーニヒスベルク)に対して、NATO軍やヴィシェグラード軍(ポーランドハンガリーチェコスロバキア)が先制攻撃をかけるというもの。ずいぶん、威勢が良い設定だなあ。いやだけど、NATO軍もヴィシェグラード軍も、ハイパーウォー能力ユニットはほとんど無いぞ。ネットウォー・マーカーで頑張る気か。対するロシア軍は、ハイパーウォー能力ありのバルト海作戦コマンド部隊に加え、インスタレーションも配置して、西側諸国軍を迎え撃つ。うーん、逆にロシアが打って出る設定なら、納得できるんだけどなあ。 

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まあ、一応この22号と27号で、21世紀の「Modern Battles」クワドリ4作は勢揃い。しかしプレイするかと言われれば微妙。ハイパーウォー能力の表現にしても、個人的には違和感がある。通信や索敵、暗視戦能力等に長けているのに、移動した後、防御側から(非ハイパーウォー部隊でも)先に防御射撃を受けてしまうのってどうなの?と思ったり。第二次大戦のウォーゲームならともかく、いっそハイパーウォー部隊は、移動した後、先制射撃もできるくらい優遇した方が、その優位性が際立つような。まあ、Mirandaがそう思うなら仕方ない。この2冊も、プレイしたいというより、今時の技術なり戦術が、どのように表現されているのか知りたかっただけなので、自分のような面倒臭いウォーゲーマーは、もっと面倒なウォーゲームに進むとしよう…… 

【参考文献】「新しい戦争とは何か:方法と戦略」

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「新しい戦争」とは何か: 方法と戦略

「新しい戦争」とは何か: 方法と戦略

 

2016年に発売された「新しい戦争とは何か:方法と戦略」を購入。前半では、アメリカを中心とした世界情勢と戦争の変化が語られている。あいにくトランプ大統領誕生以前の考察だが、テロリストとの第4世代戦争と、ロシア・中国によるハイブリッド戦争、ドローン等の自律型兵器といった新技術にも言及しつつ「新しい戦争」の形態を紹介している。また、これまでの戦争では「戦略」と「戦術」をつなぐものとして「作戦」という概念があったが、今時の戦争では「戦略」と「戦術」が密接になっているという紹介もあり。たとえば「ブラックホークダウン」で有名なモガディッシュの戦いのように、実働部隊は戦術規模であり、戦争としては比較的少数の損害であっても、戦略的敗退につながるといったケースか。

後半では、アメリカ、日本、ロシア、中国、北朝鮮、トルコ、中東諸国、インドとパキスタンベトナムとフィリピンについて、各国毎の戦略と戦争方法がまとめられている。これも最新の考察ではないものの、GMT「Next War:Korea」「Next War:Taiwan」「Next War:India-Pakistan」の参考になりそうだ。そろそろ「Next War:Vietnam」も発売される予定だし。まあ、そういったゲームの参考書になりそうな本を買ったということは、そういうことよ……

【参考文献】リチャード・イングリッシュ「近代戦争論」

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シリーズ戦争学入門の新刊「近代戦争論」を購入。原題は「Modern War」 なので「現代戦争論」じゃないのかと思ったら、内容的にはもう少し幅広く、近代的な戦争が始まったのはいつなのか?という疑問から始まり、フランス革命後からという区分で、その特徴などを簡潔にまとめている。その中で、軍事技術革命(RMA)の第1~第4世代戦争や、クレファルトやカルドアを始めとする「新しい戦争」学派にも触れているが、著者はそのあたりについては懐疑的。果たしてそれは本当に「新しい戦争」なのか?と。

先日購入したModern War誌22号でも、Joseph Mirandaによる第5世代戦争の記事が載っていたが、一応Mirandaも「新しい戦争なのか?古い戦争なのか?」というミニコラムを書いている。こういった21世紀のウォーゲームを作るデザイナーにしても、実際、今現在の戦争に対してどのような戦争観をもって作っているのかをデザイナーズノート等で明らかにしてくれると、ユーザーとしてもありがたい。

9.11テロの前後で、第4世代戦争や新しい戦争という概念が大きく取り上げられ、アメリカ軍もそちらにシフトしたが、それに対して、いやまだまだ通常戦力による戦争の可能性も已然としてあるし、通常部隊と非正規戦部隊を組み合わせた戦闘方法もあるし、治安戦や非正規戦にばかり傾くのもどうなの?という反論もある。このあたりの論戦については、エリノア・スローンの「現代の軍事戦略入門」で俯瞰できるし、「新しい戦争」学派のクレファルト「戦争の変遷」と、それに異を唱えるコリン・グレイの「現代の戦略」を読み比べてみると面白い。

【Advanced Squad Leader】「AP#15 Swedish Volunteers」「Best of Friends 2」「ASL Roma 2020」

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ASL(Advanced Squad Leader)の新作3点が到着。まずは「Action Pack #15 Swedish Volunteers」。その名の通り、第二次大戦当時、中立国ながらも近隣諸国へ馳せ参じたスウェーデン義勇兵を扱ったミニモジュールとなっている。元々は、2009年に自費出版されたモノを、MMPから正規に出版した形。収録された16本のシナリオは、すべてスウェーデン義勇部隊が絡んだ、フィンランドノルウェー、はたまたソ連領内での戦闘になっている。 

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と言う自分も、スウェーデン義勇部隊については詳しくないが、幸い、史実的な背景が(図版含めて)4ページにわたって説明されている。1/2カウンターは120個、5/8カウンターは8個付き。スウェーデン義勇部隊カウンターは、フランス軍とはまた微妙に違う青色。冬季コートを着た指揮官カウンターは、らしい仕上がりになっている。一線級分隊が5-4-8というのは優秀だが、エリート部隊は不在。まあ、ASLはこれからも、このように第二次大戦の隙間を埋めるような整備が続いていくのだろう。 

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こちらは、2013年に発売されたシナリオ集「Best of Friends」第2弾。こちらも元は、スウェーデンのASLトーナメントFriendly Fireから抜粋、修整されたシナリオのはず。12本のシナリオは、1939年ポーランド、1942年セバストポリ、1944年イタリア、1945年ベルリンと、大戦初期から末期まで含み、最後はなんと占守島(Shumshu)での日本軍戦車隊の攻撃シナリオになっている。今まで他に占守島のシナリオとかあったかなあ?  地図盤85も収録。 

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さらに2020年10月に、イタリアはローマで開催されるウォーゲーム大会のためにデザインされたシナリオ集「ASL Roma 2020」も購入。中身は、シナリオ4本と地図盤86という構成。4本のシナリオも、1940年のイタリア軍によるギリシャ侵攻、1943年のコルシカ島でのドイツ軍とイタリア軍レジスタンスとの戦闘、1943年、1944年の連合軍イタリア上陸後の戦闘と、いずれもイタリア尽くしになっている。こういった形がOKなら、日本のASL競技プレイヤーたちも、日本向けシナリオ集とか出せるのでは?

【Next War Series】GMT「Next War:Korea 2nd edition」

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昨年発売されたGMTの現代仮想戦シリーズ「Next War:Korea」第2版を購入した。以前は、本作の前身となる「Crisis:Korea 1995」(1991年発売)も、初版の「Next War:Korea」(2012年発売)も所有していたが、あいにく5~6年前に売却してしまった。その後、このシリーズから離れていたし、もう現代仮想戦はええやろと思っていたが、またこのタイミングで買い直すことに相成った。そのあたりの事情は、昨今の世界情勢や戦略的な論争とも絡む話なので、ちょっとご説明しておこう。 

実は「Next War:Korea」初版も、一応カウンターを切り離して、セットアップするところまでは持っていった。たぶん2013年頃だったと思う。しかし今ひとつプレイする気になれず、そのままゲームを仕舞った覚えがある。と言うのも、自分の中で『今さらこんな大規模な通常戦争は起こらないんだろうなあ』と思っていたからだ。なにしろその前後で、21世紀の「新しい戦争」「第4世代戦争(テロ戦争)」を掲げたクレフェルトの「戦争の変遷」を読んだり、それを上手く表現したウォーゲームに触れていたことが大きかったと思う。

2011年~2013年頃は、世界的規模のテロ戦争を扱う「Labyrinth」に触らせてもらったり、アフガニスタンでの治安戦を扱う「A Distant Plain」にも触れていたので、なるほど今時の戦争はこうなのか、といたく感心させられていた。この2作は、21世紀の「新しい戦争」を巧みに表現した名作だと思うし、今でも入手可能なので、対テロ戦争や第4世代戦争、治安戦(COIN)、低強度紛争といった軍事用語にご興味のある方は是非、触れていただきたい。

ただ問題は、自分個人が、あまりその形態の戦争に興味がなかったのだ。ゲームとしては良く出来ているけれど、自分がやりたいのは、治安警察やCIAのような役割ではなく、あくまで通常部隊同士の戦争だったということ。しかし「戦争の変遷」「Labyrinth」「A Distant Plain」のインパクトが強かったせいか、そういった既存の形態の戦争はもう無いようにも感じたし、「Next War:Korea」初版へのモチベーションも下がっていたわけだ。

しかしその後、「新しい戦争」学派に対する批判も見られるようになり、ロシアや中国の脅威に対して、アメリカ側も治安戦寄りの軍備力を見直しつつある。また最近の、ナゴルノカラバフ紛争のように、今では珍しくなった、既存形態の戦争も勃発しており、正規戦部隊と非正規戦部隊を組み合わせた戦争形態も表れ、またこの手のジャンルを探求したくなってきたのだ。

で、現代仮想戦ウォーゲームという枠で、自分にとって最もやり甲斐がありそうなタイトルを探すと、やはり「Next War」シリーズに戻って来てしまった。このシリーズもこのシリーズで、2017年からは、今時の新要素をサプリメント形式で追加するというスタイルに変わっており、変化の著しい現代戦を再現するには良いなと。まあ、このシリーズは、そもそもが面倒なシステムなので、後からルールを追加したら「屋上屋を重ねる」ことにもなるのだろうが、そこはもうつき合うしかない。 

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という長々とした理由から「Next War:Korea 2nd edition」を入手した次第。あらためて説明すると、本作は、21世紀の朝鮮半島での武力衝突を想定したゲームで、1ターン=3.5日、1ヘクス=7.5マイル(12km)という作戦級スケール。基本ルールでは、航空機は単なるポイント制だが、上級ルールでは機種別のカウンターを用いて、航空優勢を競い、制空・対地支援・打撃任務を行う。これは昔懐かしいGDW「The Third World War」からの直系の子孫とも言える。また上級・選択ルールでは、巡航ミサイル北朝鮮の核攻撃や化学攻撃、国際情勢による中国や日本の参戦などもあるが、それ全部入れるとプレイがかなり面倒になるので、プレイヤーの興味と力量に合わせて調整した方が良いと思う。

シナリオとしては、北朝鮮軍が韓国目指して南進するシナリオと、逆に韓国軍が北朝鮮へ北上するシナリオがある。また各シナリオは、開戦に際して、戦略的奇襲に成功した場合と、戦術的奇襲にしか成功しなかった場合があり、複数の開戦状況を選択できる。まあ、朝鮮半島情勢も、数年前の宥和ムードから一転しているし、韓国とアメリカの関係も以前とは違うようだし、引き続き様々な想定が必要かと思う。 

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陸上ユニットは、師団~旅団/連隊~大隊規模。2012年の「Next War:Korea」初版から、各国の戦闘序列も改訂されている。たとえば自衛隊では、初版に無かった海兵旅団が追加されているが、これは恐らく第1水陸機動連隊なのだろう(カウンター名は第5になっているが)。 

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上級ルールで用いる航空機カウンターにも、数値の見直しが見られる。特にF35戦闘機は、初版では空戦5だったのが、2版では4に変わっている。ちなみにF22ラプターは空戦力6、ロシアのSu-27が空戦力5、中国のJ31、J20も空戦力5という評価。ただしF22とF35、J31とJ20は長距離ミサイル攻撃能力(★★)を持ち、Su-27スタンドオフ能力(★)だけを持つ。まあ、こういった評価も、中国軍機の実情が分かってきたら、変わってくるのだろう。どうせプレイするなら、この機種別航空カウンターを用いてプレイしたいが、なかなか敷居も高いので、結構気合いが要りそうだ。

とにかく現代仮想戦ゲームは、この「Next War」シリーズを軸に触れていく予定。すでに他のシリーズ作も入手しているので、ぼちぼち紹介していこうと思う。 

 

【Next War Series】GMT「Next War:Supplement #1」「Supplement #2」

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GMTの仮想現代戦「The Next War」シリーズに再挑戦ということで、2017年発売の「Supplement #1」と、2019年発売の「Supplement #2」も購入。この「Supplement」の登場によって、新要素が登場したり、機種や部隊が変わった場合には、後からシリーズ全作に適用できる追加モジュールを差し込むという形となった。たしかに現代戦ゲームは、数年経つとOut of Dateになる可能性が高いので、ゲーム本体を長持ちさせるという意味でも、シリーズ構想としても、良い試みかなと思う。 

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まず「Supplement #1」で導入されたのが、新たな航空戦ルール。「Next War」シリーズでは、基本ルールでは航空機は単なるポイント制であり、上級ルールでは機種別の航空機カウンター(スコードロン/ウイング単位)を使用する。しかしこの上級ルール、よくよく考えるとあまり現実的ではない。たとえば実際に、FA18攻撃機24機に、F35戦闘機24機が護衛につく、ということはない。本来は、FA18攻撃機2機+F35戦闘機2機+ワイルドウィーゼル機というような、ストライク・パッケージ単位で運用されるはずで、この「Supplement #1」で導入されたのも、それを再現するルールである。用意されたパッケージ・カウンターには、空戦力・対地支援力・打撃力が記されているが、機種名は入っていない。なので難易度としては、基本と上級ルールの間の、中間ルールという位置づけであり、それでいて、より現実的だと。しかし機種名が無いのも寂しい話だし、ストライク・パッケージの運用がやりたいなら、21世紀版の「Red Storm」とか出せば良いのでは?とも思う(それはそれで欲しい)。

また「Supplement #1」では、サイバー戦ルールも導入されている。各サイバー戦カウンターには、サイバー攻撃力・防御力・生存力が記されている。これを用いて、国連決議、電子偵察、航空優勢海上探知のダイスロールや、航空打撃の阻害、地上戦闘のコラムシフトに影響を与えられる。一度使用したカウンターは、生存判定(継続的にサイバー戦が行えるかどうか)を行い、失敗すると失われる。まあ、名前はサイバーだが、言ってみれば便利マーカーで、この「Next War」スケールでサイバー戦を取り入れるとすれば、こういった形になるのだろう。 

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また、本来は抽象的だった潜水艦ルールも、中国海軍の台頭を受けて、もう少し詳細な形のルールが登場している。潜水艦カウンターには艦名が入り、海上ボックスの支配を争う形になる。海上自衛隊からは「おやしお」「そうりゅう」が登場。またパトリオット、S300、S400といった対空ミサイルカウンターも登場している。

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それに続く「Supplement #2」では、ずばり反乱戦(Insurgency)ルールが追加されている。これは「Next War:Korea」で、アメリカ・韓国軍が北朝鮮を支配した後、北朝鮮ゲリラの抵抗を受けたり、逆に北朝鮮軍が韓国を支配した後、韓国ゲリラの抵抗を受けるという想定になっている。また「Next War:Taiwan」での中国軍支配後の台湾での反乱、「Next War:Indo-Pakisatn」でのインド支配後のパキスタンでの反乱、「Next War:Poland」でロシア支配後のポーランドの反乱を扱うことになる。

デザイナーズノートでも『プレイヤーは、プレイ中に不満を抱えるだろう』『1回プレイしただけでは好きになれないかもしれない』と書いてあるが、たしかに通常戦力同士の軍事衝突を想定した「Next War」シリーズファンからすると、あまり望んでいない、異質な展開になりそうだ。 

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反乱(Insurgent)カウンターは、地図盤上に裏向きに配置され、それがどれだけの戦力を有しているかは分からない。中には「政治活動中枢(PAC)」と呼ばれるカウンターもあり、これは都市部においてテロ攻撃を行える。テロ攻撃に成功すれば、勝利ポイントが稼げるので、反乱側としては、いかにこのカウンターを都市部に潜り込ませるかが鍵。この反乱側ユニットは、鎮圧側ユニットのいるヘクスにも浸透移動を行えるので、当然、鎮圧側としては、それを見つけ出すのが鍵になってくる。

ただ、ふと思ったのは、パキスタンで反乱勢力が湧い出てくるのは想像できるのだが、果たして実際に、台湾が中国に支配された場合、台湾の人たちはテロも含めた抵抗を行うのだろうか。もちろん、中国が苛烈な支配を行えばそうなるという想定なのだろうが、そこは中国としても、今の香港のように、住民側が仕方なく支配を受け容れつつ、非暴力的な抵抗を行う程度の支配で済ませるのかもしれない。このあたり、その国や文化によって、戦争や抵抗の形も違うのだろうなと。

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さらに進捗著しい中国軍の差し替えカウンターあり、THAAD(終末高高度防衛ミサイル)あり、北朝鮮の核攻撃ルールあり、ロシアのSu57戦闘機、K300P沿岸防衛用地対艦ミサイル等々、シリーズ作に追加できるカウンターも多々収録されている。ルールの大半は、選択式なので、これを全部入れる必要は無いし、興味のあるところだけ、つまみ食い的に採用すれば良い。

ちなみに、すでに「Supplement #3」もGMTのP500に上がっており、オーダーも700を越えているので、そのうち発売されるだろう。「#3」の目玉は、「Next War:Poland」の拡張マップ(カリーニングラードリトアニア、ゴトランド諸島)とのこと。「Poland」は現在、第2版も準備されているが、そちらに入る拡張マップとは違うのだろうか。まあ、このように、シリーズ全体を補完してくれるモジュールがあると、作品そのものが古くならないので、現代戦ゲームには向いているかと思う。


【Next War Series】GMT「Next War:Taiwan」

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GMTの現代仮想戦Next Warシリーズに再挑戦……は良いのだが、あいにく2014年発売の「Next War:Taiwan」が品切れていたので、海外オークションで新品を入手。と言っても、特にプレミア価格は付いておらず、8000円程度(送料・手数料入れたら10000円超えたけど)。しかし到着から数日後、GMTにて「Next War:Taiwan 2nd printing」のプレオーダーが始まった。昨今の米中関係の悪化に配慮して、もうこのタイトルは出さないかと思ったが、悪化しているからこその再版なのかもしれない。まあ、再版されるにしても数年後だろうし、とりあえず初版を持っていても良かろうと。 

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本作のテーマは、中国軍による台湾侵攻。シナリオは「Next War:Korea」と同じく、中国軍が戦略的奇襲に成功したパターンと、戦術的奇襲にしか成功しなかったパターンの他、先に第2次朝鮮戦争を仕掛けておいてアメリカ軍の増援を朝鮮半島に引きつけたうえで台湾に侵攻するとか、尖閣諸島の占領を目論んで日本も参戦するなど、日本人としては物騒すぎる状況設定もあり。そのため、台湾本島を描いた地図盤の他に、海域マップもあり。こちらには、尖閣諸島の他に、南沙(スプラトリー)諸島も入っているため、当然その係争国である、フィリピン、マレーシア、ベトナムのユニットも登場する。 

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こちらは、台湾軍ユニット。陸上ユニットの大半は、1ステップの歩兵旅団ばかり。空軍も、F16戦闘機が主力で、中国軍の侵攻を防ぐには頼りない。 

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こちらは中国軍ユニット……なのだが、本作は6年前の作品であり、その間に中国軍の改編も進んだのか、情報が明らかになったかは知らないが、陸上ユニットの大半は、2019年発売の「Next War Supplement #2」で差し替えとなっている(そして強力になっている)。また航空ユニットに関しては、最新鋭J31戦闘機が空戦力6となっているが、これも後発の「Next War:Poland」で空戦力5に差し替えられている。J31戦闘機に関しては、いまだ輸出されておらず、その原因が性能の低さだとされているが、それを反映したのだろうか。 

トランペッター 1/72 中国 J-31 技術実証機 プラモデル 01666

トランペッター 1/72 中国 J-31 技術実証機 プラモデル 01666

  • 発売日: 2017/12/17
  • メディア:おもちゃ&ホビー
 

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こちらは、アメリカ、日本、アセアン諸国のユニット。アメリカ軍航空機ユニットも「Next War:Poland」でその多くが差し替えられている。F35戦闘機は空戦力5から4に格下げされたが、F16戦闘機にはスタンドオフ能力が付き、B1爆撃機には対地支援能力が付く等々。自衛隊ユニットとしては、第1空挺団他が収録されている。このように、初版のカウンターの多くがもはや使い物にならないので、おとなしく再版を待つか、追加カウンターを入手した方が良いだろう。とは言え、他のシリーズ作もすでに品切れなのだけれど…… 

中国の海洋強国戦略:グレーゾーン作戦と展開

中国の海洋強国戦略:グレーゾーン作戦と展開

  • 発売日: 2020/03/19
  • メディア:単行本
 

まあ、状況設定としては、もし中国軍が台湾に侵攻するなら、まず政治的にアメリカが介入しないようにしたうえでかなとも思う。上級シナリオでは、参戦レベルにも差があり、アメリカ軍による補給物資や特殊部隊のみの参戦から、海空軍のみの参戦、さらに海兵隊空挺部隊の参戦、最終的に全軍の参戦という形があるため、長期シナリオによっては、そのエスカレーションも試せるかと思う。

最近の米中関係の悪化に伴い、書店でも、台湾を含んだ米中戦争を想定した本が数多く売られているが、嫌中国的なスタンスの本も多々あり、あまり扇情的な内容の本は読む気がしない。とは言っても、軍事想定として検証してみたいテーマであるのも確か。なるべくなら、1980年代に西側がソ連の侵攻を恐れていたように、何も軍事衝突が起こらないまま時が過ぎ、20年後ぐらいに『いや、あれこれ心配していたけれど、中国にはそんな意図も戦力もありませんでしたよ』というオチになってくれれば良いのだけれど…… 

【参考文献】デイヴィッド・M・グランツ「ソ連軍 作戦術 縦深会戦の追求」

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ソ連軍〈作戦術〉

ソ連軍〈作戦術〉

 

「詳解 独ソ戦史」等でもお馴染み、デイヴィッド・M・グランツの「ソ連軍 作戦術 縦深会戦の追求」の翻訳が出たので購入。原書発行は1991年。アメリカ陸軍によるソ連軍研究の一環として出版されたモノで、言ってみれば、まだソ連という国が健在だった冷戦末期に、ソ連軍の戦闘方法を解き明かそうとし、その変遷を追った内容になっている。

タイトル的には「作戦術」が前面に出ているし、ソ連軍が、戦略と戦術をつなぐものとして作戦という概念を重視した、という部分にも触れているが、どちらかというと、そこから生じた縦深戦闘についてがメインテーマになっている。またその縦深戦闘を行うために、ソ連軍師団が1910年代から1980年代までどのように変化したかにも触れており、歴史的な部分は多いものの、キモは『来たるべき第三次大戦でソ連軍はどのように戦うのか』という分析になっている。なので、もちろん第二次大戦ウォーゲームの参考にもなるが、むしろ仮想・第三次大戦ウォーゲームの参考書としての方が役立ちそうだ。昨年、古い本ながらデービッド・C・イスビーの「ソ連地上軍」を購入したが、併せて読むと、より理解が深まりそうだ。

で、本書にあるような、1980年代のソ連軍の縦深戦闘を再現できるウォーゲームとなると、古くはSPI「NATO Division Commander」、近年では「Less Than 60 Miles」だろう。本書でも、敵の防御態勢によって師団の攻撃態勢を変える例が載っているが、各ユニットの態勢の違いまで再現したゲームとなると、やはりこの2作か。あいにく昨年発売の「Less Than 60 Miles」ですら、すでに品切れ状態だが、そろそろシリーズ第2弾「The Dogs of War」も発売されるらしい。自分も「Less Than 60 Miles」はまだ軽くプレイしただけなので、本書を読みつつ「The Dogs of War」にも触れる予定である。

【C3 Series】Less Than 60 Miles デザイナーズノート翻訳

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仮想・第三次世界大戦ゲーム「Less Than 60 Miles」のデザイナーズノートを訳したので、TRL Gamesに送ったところ、速攻でアップしてくれました。拙い訳ではありますが、プレイの参考になるかと思いますので、上記リンクからダウンロードしてみてください。

あらためてデザイナーズノートを訳して感じたのは、ワルシャワ条約機構軍としては、かなり綿密な事前作戦計画を求められるなと。第1梯団の師団は、72時間交替することも許されずに前進を命じられ、3時間ターン刻みで、何月何日何時ターンには攻撃目標へ到達する、目標へ着いたら行軍態勢から攻撃態勢に移る、そのためには何ターン前に命令変更を発令する、という段取りを決めておく。非常にソ連的、計画的。だからこそミニマップが付いているし、そういった事前計画が好きなウォーゲーマー向け。あいにく自分は、行き当たりばったりでプレイする方が好きだし、以前にソロプレイした際にも、あまり計画は決めなかったが、次回はきっちり計画を練ろうと思う。

もちろん、そんな計画通りに行くはずもなく、NATO側としては、いかにその計画を遅延させるかがカギ。ソ連軍としては、綿密な侵攻スケジュールを睨みつつ、その遅れに歯がみし、脳内に現れた政治将校から『同志少将、予定より6時間遅れているようだが』と言われる感じ(仮想第三次大戦小説でよくある場面)。いやあ、非常に正しい第三次世界大戦シミュレーションじゃないですか。

【Next War Series】GMT「Next War:India-Pakistan」

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2015年に発売された、現代仮想戦シリーズ第3弾「Next War:India-Pakistan」を神保町の書泉グランデにて購入。そう、本作はもうすでに品切れなのだが、ぶらっと書泉に行ってみたら、まだ店頭在庫が残っていたのだ。特にプレミア価格でもなかったので、じゃあ、確保しておくかと。

本作は、インド=パキスタン間の係争地である、カシミール地方、パンジャブ地方を巡って両国が武力衝突をしたら?という想定。Next Warシリーズ第1弾の第二次朝鮮戦争、第2弾の中国の台湾侵攻というテーマは、我々日本人にも馴染みがあるが、インド=パキスタン間の戦争となると、ちょっと縁遠いかもしれない。両国の建国のいきさつや、ヒンドゥー教徒イスラム教徒の宗教的対立も複雑だ。

ちょうど本作発売直後に発売された「新しい戦争」では、一章を割いて、このイン・パ戦争の可能性を分析しているが、純軍事的に見ると、たしかに興味深い事例ではある。なにしろ紛争当事国同士が、領土を接しているうえ、核兵器を持っているというのは、穏やかではない。しかも両国のドクトリンから言って、戦術核兵器を使用する敷居が低いのではないかという考え方もある。

そもそも両国は、国力の低いパキスタンが攻撃的であり、国力の高いインドが防御的というスタンスから始まっている。しかし1980年代後半、インド陸軍参謀長の名を冠した「スンダルジー・ドクトリン」が採用され、もしパキスタン軍が攻めてきたら、インド軍としては、歩兵防御部隊で戦線を支えつつ、機甲打撃軍団をパキスタン領内に侵入させて国土を奪うという攻勢主義に変わったと。さらにインド軍は、2004年に「コールド・スタート」という、師団規模の統合戦闘群8個を攻勢の主軸とし、防御軍団も開戦から積極的に攻勢に出る、さらに積極的なドクトリンが噂された(実装はされていない模様)。

これに対してパキスタンも、もしインド軍機甲部隊が領内に侵入してきた場合、使用のハードルが低い戦術核での応戦をちらつかせていると。たしかに戦略核なら、国際世論も厳しくなるし、インド軍も報復のハードルが下がるが、果たして戦術核を使用された場合に、インド軍は報復として戦術核を使用するのか?という疑問もある。本作も、そういった核戦争に至る緊張を検証できる作品だと思う。 

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地図盤は、南北に長い地域で、北はカシミール地方の山々、南はパンジャブ地方の河岸平原になっている。北部は、パキスタン側が支配するアザド・カシミールと、インド側が支配するラダック連邦直轄領、ジャンムー・カシミール連邦直轄領が接している。さらにその北の地図盤外には、中国の新疆ウイグル族自治区があり、この国もまた、インドとパキスタンの紛争に関与する可能性があるとされている。 

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こちら茶色がインド軍ユニット。やはりコールド・スタート的な編成はされておらず、8個の統合戦闘群ユニットも無い。以前からの、防御的な歩兵師団と、攻勢的な戦車師団に分かれている。空軍的には、ロシアから買い付けたSu-30(空戦力5★)が目を引くが、その国力や人口ほど、部隊が多いわけでもない。

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こちら緑色がパキスタン軍ユニット。インドよりも国力・人口ともに小さいせいか、個々の陸上ユニットも、やや戦力が低い。しかし航空ユニットを見ると、アメリカ製のF16、フランス製のミラージュ、中国製のJ-10と、あちこちからかき集められた感がある。両国の空軍とも、どこか「エリア88」的だなあ……

本作には、カシミール地方シナリオ、パンジャブ地方シナリオ、その統合シナリオがあるうえ、政治的にパキスタンが分裂・崩壊し、その国内に中国が進出し、パキスタン軍が保有していた核弾頭の半数も行方不明となったという恐ろしい想定も。これに対してアメリカ、インド、ロシアが手を組んで、パキスタンの治安維持と、核兵器のコントロールに乗り出すという、軍事スリラー小説的なシナリオもある。

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そのアメリカ、ロシア、中国軍ユニットがこちら。インド、パキスタン両軍の核兵器マーカーもあるのが恐ろしい。とは言え、両軍が核を握りしめたまま、通常戦争のまま押し切るのか、それとも核戦争へエスカレートするのか、という想定は興味深い。イン・パ両軍の戦力も拮抗しているため、通常戦争なら手詰まりになるような気もするし、だったら戦術核で状況を打開しようとしてもおかしくないかも。本作では、先に戦術核を使えるのはパキスタン側と決められているが、戦術核を一発撃って、それで打開できなかったら? インド軍も一発撃ち返して、バランスが振り出しに戻ったら? そこで2発目を撃つのか、3発、4発と有利になるまで撃ち合うのか? 実際に懸念されている核危機だけに、本作の想定が実現しないことを祈る。 

 

【参考文献】「ニミッツの太平洋海戦史」

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仕事で、十数年ぶりに八王子駅に下りたので、ついでに古書店探索。本当は4軒回るつもりが、2軒が休業日だったのでアチャーと思ったが、開いていた1軒で、1992年版の「ニミッツの太平洋海戦史」を1500円で発見。これ、もっと古い版は古書市でもよく見かけるのだけれど、1992年版が欲しかったし、それもAmazon中古だと4000円ぐらいするので、今日はまあまあのヒット。

内容は「海戦史」と言いつつも、個々の海戦を細かく扱ったものではなく、(島嶼上陸作戦含めて)あくまで太平洋戦争全般の流れを語ったもの。それも、特にニミッツ本人が『その時、私は……』とプライベートな心情を語る部分はほとんど無く、そういう意味では、あまり面白みが感じられなかった。まあ、ニミッツという人物そのものが、戦略家というより調整役としての手腕を評価されている人なので、こういった書物でも『俺が俺が』的な強いエゴが出ないのは納得である。

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